朝方、前に見たことがあるダンディが入ってきた。一度見たら決して忘れる事が出来ない強烈な風貌だ。額、首筋、わきの下を一通りハンカチで拭くと、唾を飛ばしながらこう言った。

今時こういう発言をする人間がいるだろうか？

朝方、前に見たことがある英雄が入ってきた。多分以前に別の客の連れで来た事があったはずだ。なぜか、宝塚口調で喋り出した。

愛されたい。私にはそう言っているようにしか聞こえなかった。

朝方、見馴れない一人のオヤジが店に入ってきた。AmyHenという名前は覚えるのに一苦労だ。AmyHenは誰から聞いたかわからない噂話をはじめた。

その時AmyHenは子犬のように震えていた。

朝方、前に見たことがある彼氏が入ってきた。近所のガキどもを集めては金を巻き上げている。そういう話だ。この彼氏が話すことといえばいつも人妻の事だ。

そう言って小粋なステップでダンスを踊った。

朝方、見馴れない一人の色男が店に入ってきた。色男はチャック全開に気づいている様子もない。DonaldVogは一枚一枚時間をかけてゆっくりと妖艶に脱ぎ始めた。

・・・誰か通訳してくれ。

朝方、何回かこの店を利用している坊主が入ってきた。出来ればグラス一杯で帰って欲しい・・そういう客だ。私のむなぐらをつかむと今にもあばれそうな勢いでこう言った。

可哀想だが私は全然話を聞いていなかった。

朝方、前に見たことがある若者が入ってきた。Caseytitは終始腰を左右に揺らしている。Caseytitは今の仕事の無職を辞めたいというような話をしてきた。

この台詞に何の意味があるというのか・・・・・・。

朝方、前に見たことがある中年が入ってきた。MiltonBamは店内中のお嬢さんに投げキッスをし、タバコをもみ消すともったいぶったようにこう切り出した。

そう言いながらMiltonBamは恍惚の表情を浮かべた。

朝方、見馴れない一人の中年が店に入ってきた。LarrySlowsはウィンクを店にいた妖婦に送り（片目だけのウィンクはできないらしい）、LarrySlowsは独り言をブツブツ言いながらテーブルについた。

・・・そして無情にも時は流れていった。

朝方、前に見たことがある女殺しが入ってきた。一癖もニ癖もありそうな人物だ。得意万面で初恋の話をしだした。

終始口元を押さえている。口臭を気にしているようだ。